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21世紀老人

時は21世紀.

高齢者の運転者には,高齢運転者標識の表示が義務化され,

医療も,後期高齢者医療制度が施行された.

少子化対策のみがクロースアップされ,社会は高齢者を見捨てつつあった.

 

そんな中,ある一人の老人が宗教法人を立ち上げ,教祖として立ち上がる.

その老人は,社会に虐げられる仲間を集い,「めいゆう」と呼んだ.

ある,めいゆうは私財を投じ,これまでの経験とコネクションを生かして,

めいゆうたちが楽しく暮らすことの出来る,「めいゆうランド」を作った.

 

そんな老人たちを,若者たちは見向きもしなかった.

むしろ,街から老人がいなくなることを,歓迎していた.

さらには,めいゆうランドを「ロージンホーム」と呼んだりもしていた.

 

しかし,めいゆう達の結束は硬かった.

大工の棟梁もいれば,手つきは怪しいが医者もいる.

農業のエキスパートもいれば,各学問分野の元教授もいて,

大抵のことは全てまかなうことが出来た.

さらに,間伐材で作った炭を燃料とする蒸気機関が現代版にアレンジされ復活し,

石油レス社会が形成された.

変な話ではあるが,めいゆうがお亡くなりになると共に,多額の保険金が発生し,

宗教法人に寄進する.

ただし,宗教といっても,それぞれ過去の経験を生かした資産運用を心がけており,

一部が全て持って行くといくということはなかった.

そして,老人達は決して裕福とは言えないが,普通に暮らしていくことが出来た.

テレビなんか必要ない,みんなそれぞれが過去の経験を語り合うことで,毎夜毎夜を明かしていた.

(ただし,老人の夜は早く,朝が早い.)

 

めいゆう達は,余生の掛け軸に書かれた言葉を合い言葉としていた.

「ほしがりません.たりてます.」

(新余生の掛け軸には,「いまがいちばんゆうふくです.」と人間国宝の書で書かれている.)

 

そしていつしか,世界は若者が暮らすエリアと,老人が暮らすエリアに二分された.

日本では,老人たちのほとんどが九州・四国へ集まり,若者たちが暮らす本州と,一発触発の関係となってしまう.

関門海峡や本州四国連絡橋は自由に行き来できなくなり,

さらにお互いの関係は冷え込んでしまう.

(なお,四国に老人達が住み着いたのは,

うどんがおいしいうえに,八十八カ所参りができるから.

九州は暖かかく,農業にも適しているから.)

 

そんな折,未曾有の異常気象が世界を襲う.

特に農作物の生産量は例年の10%程度と,大飢饉が起こったのである.

老人たちは,大東亜戦争や大空襲に比べればよっぽどまし,我慢なら慣れとる,

と,全く困ってはいなかったが,

若者たちのほとんどは何の対応も出来ず,ただ呆然とするのみであった.

 

それでも,図書館・インターネットで何か役に立つ情報はないだろうか,と探す者,

今を乗り切れば何とかなるさ,と楽観主義を唱える者,

様々現れたが,状況は悪くなるばかりであった.
 

そして,ある若者が老人達に知恵を授けてもらえないか,ということで四国へ旅立つのであった.

 
 

おしまい.

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